◆回転工具の劣化

<回転工具の劣化>

回転工具にも寿命が存在します。軸が破損してしまったり、内部のギヤ変形による回転ロック、あるいは刃物クランプ部の摩耗によるクランプ力不足等の様々な原因が挙げられますが、いずれも加工する製品の品質が保てなくなった時点で回転工具は寿命を迎えます。この際、突発的な故障(衝突や落下等)以外については、前段階でその兆候が見られます。これが回転工具の劣化です。

 

<劣化状態の放置>

回転工具の劣化状態は使用前点検や設備の定期点検等で気づくことが可能ですが、ここで先の寿命である、加工する製品の品質が保てなくなった時点、が劣化状態を放置してしまう原因になります。回転工具を使用して行う切削加工は、比較的緩い公差であることが多く、そのため劣化状態での加工でも製品の切削加工が可能となってしまうことがあります。結果として『使えるなら良いか』と放置されるケースが多く、本来の工具寿命がさらに短くなることも懸念されます。

 

<劣化状態での回転工具の使用>

劣化状態回転工具での加工を行った場合、いろいろな問題点があがりますが、その中には気づき難いものがあります。

 

1.加工精度の低下

 製品の穴径や穴位置の寸法が悪化していき、品質の低下を招きます。特に寸法精度が安定しない場合、不良率が徐々に上昇していくため、気づき難く、使用期間が長ければ長いほど損失が大きくなります。

2.刃物の寿命が短くなる

 回転工具に使用しているドリル、タップ、リーマー等の工具の劣化が加速し、刃持ち(刃物の寿命)が短くなります。消耗品であるため気づき難く、超鋼ドリルなどは加工時のフレ精度によっては折れてしまうこともあります。

3..設備本体への悪影響

 回転工具のシーリングが不足してくるとクーラント水が工具を伝って設備本体へ侵入する可能性があります。また、回転工具と設備の連結部分に摩耗や変形等が生じた場合、直接本体へ影響を与えるため、本機側も摩耗、変形をしていくことになります。このような悪影響により本機が不具合を生じた場合、その修正には工具と比較にならない費用、労力が必要になります。